自作キーボード基板SU120の紹介
2020/04/07
SU120とは
SU120は最大120キーまで拡張可能な自作キーボード基板です。
基板に添付のビスケットとM1.4ネジで自由なレイアウトを組むことができます。
e3w2q/su120-keyboard: Expandable keyboard with up to 120 keys
これまでは、ほしい方が基板製造業者に直接発注し、パーツ類も別途買い揃えるしかありませんでしたが、TALP KEYBOARDにてSU120の取り扱いが始まり、ほぼ週刊キーボードニュース #55でも取り上げていただきました。
SU120をおすすめするケース
SU120はいろいろな用途がありますが、それ故にどういう場合に使えばいいのか、なかなか想像しにくい部分があるため、設計者としておすすめできるケースを以下に記載します。
お手頃なマクロパッドやテンキーがほしい場合
自作キーボードに興味を持ったときに、なかなか一気にお金をかけるリスクをとることが難しい場合もあると思います。私もそうでした。
SU120はできるだけ最低限の要素でキーボードとして成立するように設計していますので、一般的な自作キーボードの総費用と比較すると、お手頃な出費で組むことができます。
例えば、15キーマクロパッドのパーツをTALP KEYBOARDで揃える場合の総費用は以下のとおりとなります。
パーツ | 商品ページリンク | 数量 | 金額 |
---|---|---|---|
SU120(マクロパッドセット) | SU120(マクロパッドセット) | 1セット | 550円 |
Pro Micro | Pro Micro ATmega32U4 5V/16MHz/MicroUSB2(互換品) | 1個 | 550円 |
スイッチソケット | Kailh PCBソケット(MXスイッチ用/10Piece) | 2セット | 300円 |
キースイッチ | キースイッチ 5ピンのものを推奨 |
15個分 | 1,400円~ |
キーキャップ | DSAキーキャップ キーキャップセット |
15キー分 | 660円~ |
Micro USBケーブル | ケーブル | 1本 | 300円~ |
送料 | 300円 | ||
計 | 4,060円~ |
実際にSU120でマクロパッドを作られた例を紹介します。
あとchocの2uも買った。やっぱ2uの位置は2uのキーキャップだな。しっくりくる。まあこれテンキーなんだけど pic.twitter.com/21Sespo21R
— ( ) (@illness072) November 4, 2019
#自作テンキー OR15やっと完成。キー割当てをOLEDで、レイヤーをアンダーグローで表示。音量などを回して変更するのは気持ちいい。 pic.twitter.com/Bhx8HuV5Yj
— ALTAX (@ALTAX8) January 4, 2020
補足:自作キーボードの価格について
市販の安いキーボードと比べると、一般的な自作キーボードキットの価格は高いように感じてしまう場合もあるかもしれません。しかし、部品費用、キッティング費用、試作費や研究開発費を考慮すると、決して高くはなく、むしろ安価な場合も多々あります。
SU120は基板ペライチですが、一般的な自作キーボードキットはケースなども含めて販売されており、打鍵感、見た目の美しさなど、製作者の工夫が詰まっています。
SU120を使って物足りなさを感じたら、自分にあったキットを探してみてください。もちろん、SU120をベースに改造いただくのも大歓迎です。
任意サイズのテンキーや格子配列キーボードがほしい場合
テンキーを自作する大きなメリットは、入力されるキーを自由にカスタマイズできる点だと思っています。ファームウェアをカスタマイズすることにより、
- ワンキーで「00」「000」を入力する
- テンキーにTabキーや「,」キーを載せる
- NumLockオンオフで入力内容が変わってしまうテンキーの数字キー入力ではなく、常に普通の数字キーが入力されたようにする
などが可能となります。
また、自作キーボード全般のメリットでもありますが、スイッチやキーキャップを変えることでお好みの打鍵感や見た目に変更することができます。
いろいろなサイズの自作キットが販売されているので、合いそうなものがあればそれを買えばよいです
が、もしも自分のほしいサイズのものが見つからなくても、SU120で、好きなサイズ(コントローラー1つあたり最大6×10まで)のテンキーや格子配列(Ortholinear)キーボードを作成することができます。
SU120で格子配列キーボードを作られた例を紹介します。
#SU120 で55%(?)キーボード作ってみました。PCBのみは1回やってみたかったのですが、思ったより悪くない(精神衛生上以外は)。そしてUSBコネクタの位置はやっぱり邪魔くさかったので要改善。 pic.twitter.com/0baJHFjIMv
— ryuichio (@ryuichio1) October 22, 2019
elecrow に発注したPCB待ってる間にひとつ試作版キーボードが完成してしまった。折りたたみ式ロープロortholinearの44キー。蝶番の軸パーツを引っこ抜くと分離も可能。軸パーツ自体も小物入れに・・・なるはずだったがサイズ的に大したものは入らないなこりゃ pic.twitter.com/3V5z0U7afT
— ( ) (@illness072) November 19, 2019
やっぱり寂しいのでピカらせてみた。
— はなち (@haswellep) February 15, 2020
キーキャップももうこれでいいかな pic.twitter.com/TBZVfOWNKO
一口に格子配列といっても、作る方によって全く違ったものができていますし、本当にどれも素敵です!
自分に合ったレイアウトのキーボードを試作する場合
SU120を設計した理由は、自分がend game(理想のキーボード)までいろいろ試行錯誤するために、手軽に自由なレイアウトを試せるキーボード基板がほしかったからです。
SU120はビスケットとネジでいろいろなレイアウトを組むことができますので、皆様のend game到達の過程においてお手伝いができるかと思います。
SU120を使用いただいたケースを2つ紹介します。
elephant42
両手ぶんねじ止め完了。プロマイクロ部までふくめたケース出力もはじめた。あとはケース底部デザインと実際の配線だな。うんうん先は長いぞっと pic.twitter.com/LJgvUClfq1
— ( ) (@illness072) November 3, 2019
#elephant42 ケースrev.6。開口部の位置と厚さを調整。またケースなしでサンドイッチマウントもできるようにした。ケース設計はとりあえずこれでFIXとして、このサイズと各種位置関係から基板設計をやっていこうかな。 pic.twitter.com/89nmag6hjA
— ( ) (@illness072) November 6, 2019
完成したelephant42のキットは現在BOOTHのうさぎごやで販売されています。プロトタイプ版からさらに細かな部分の調整が行われ、洗練されています。
製作者の@illness072さんはelephant42を常用しているらしいので、最短でend gameに到達するお手伝いができたといえるかもしれません。
colice
#colice プロト、恥ずかしながら、中はこんな感じで、プロト感満載です。
— Takeshi Nishio (@jpskenn) March 3, 2020
インジケータLEDはケースのテスト用に、一旦外してあります。
一応(?)トップマウントになっています。 pic.twitter.com/BEhWbGk1i7
#colice のキープレートv0.2への換装完了。
— Takeshi Nishio (@jpskenn) March 18, 2020
初期版と比較して、カラムスタガとロースタガのギャップが無くなり、薬指と小指のキーが近くなって良い。
ケースはハイプロフレームを一部削ったり切ったりして対応させたので、プロト感がさらに強まった。 pic.twitter.com/25e9wZOTyX
@jpskennさんが作られているcoliceというキーボードでもSU120が使われています。一度組んでしばらく使用された後にレイアウトを修正されていて、現在はv0.2です。
Aliceスタイルの分割キーボードの間にテンキーが配置されていて実用性が高そうです。
小ネタキーボードを作る場合
ちょっとした思いつきでキーボードが作りたくなったときに、基板設計や3Dプリンタ無しで、さくっと作れます!楽しいです!
SU120の入手方法
現在はTALP KEYBOARDから購入する方法と、基板製造業者に直接発注する方法があります。
TALP KEYBOARDから購入
基板単体のほかに3種類のセットが販売されていますが、おすすめの買い方は以下のとおりです。
- 基板単体だけではダイオードなどのパーツやネジを別途買い揃える必要があるので、セット版のほうが便利
- 15キー程度でよいならマクロパッドセット、30キー程度までならテンキーセット、テンキー無しファンクションキー無し程度のキー数までなら分割キーボードセットを選択
- セットで足りない場合基板単体を買い足せばよいが、+50円でダイオードも付いてくるマクロパッドセットのコスパがいいので選択肢として考慮
なお、セット版を買う場合でも、完成にはキースイッチなどのパーツが必要です。 以下に必要なパーツを挙げておきます。
パーツ | TALP KEYBOARD商品ページ | 遊舎工房商品ページ |
---|---|---|
Pro Micro | Pro Micro ATmega32U4 5V/16MHz/MicroUSB2(互換品) | Pro Micro (コンスルー付き) ※コンスルーは使いません |
スイッチソケット | Kailh PCBソケット(MXスイッチ用/10Piece) | スイッチ用PCBソケット(10個入り) |
キースイッチ 5ピンのものを推奨 |
キースイッチ | Switches |
キーキャップ | DSAキーキャップ キーキャップセット |
Keycaps |
Micro USBケーブル※ | ケーブル | USBケーブル Micro B 1m 自作ケーブルキット |
TRRSケーブル※(分割キーボードの場合) | TRRSケーブル 1m 自作ケーブルキット |
※コストを抑えたい場合はMicro USBケーブル、TRRSケーブル(AUXオーディオ接続コード)を100円ショップで調達する方法もあります。
基板製造業者に発注
これまでと同様にELECROW基板製造サービスから注文する方法もあります。
アップロードするガーバーファイルは以下の中から必要なものを使ってください。
概要 | URL | 寸法 |
---|---|---|
基板 | https://github.com/e3w2q/su120-keyboard/blob/master/pcb/su120-gerber.zip | 99×99mm |
汎用トッププレート | https://github.com/e3w2q/su120-keyboard/blob/master/plate-pcb/su120-plate-gerber.zip | 99×99mm |
120キー格子配列分割キーボード用プレート | https://github.com/e3w2q/su120-keyboard/blob/master/plate120-pcb/su120-plate120-gerber.zip | 133×190mm |
100×100mm以下の場合は、5枚も10枚も費用は変わらないので、10枚にするとよいかもしれません。
レジスト色はお好みの色を選択してください。
最後に
自作キーボードの楽しみ方のひとつに、工夫がこらされた製品を買って愛でたり、自分に合うキットを探したりする楽しみ方があります。
これとはまた別の楽しみ方として、SU120で基板ペライチから自作キーボードを始めてみたり、自分で好きなレイアウトを模索してみたりと、SU120が自作キーボードの楽しみ方の間口を広げるひとつの機会になっていればいいなと思っています。
自作キーボードを楽しみましょう!!